MM9

「一人でも多くの人間を災害から救うのが、気象庁職員の務めだ!(中略)怪獣災害は防ぐ!防いでみせる!」(p251)

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地震、台風などと同様の自然災害の一種として怪獣が存在する現代の日本を舞台に怪獣対策のスペシャリスト集団である気象庁特異生物対策部(気特対)の活躍を描く連作短編集。タイトルのMMとはモンスター・マグニチュードの略であり、怪獣の災害規模の指標である。


現実に怪獣が存在してそれが暴れ回るなら自然災害で気象庁の管轄じゃないかって設定から既に面白い。実際に怪獣を倒すのは自衛隊であり、気特対は怪獣の出現予測や対応策の検討、現場で自衛隊への指示をする組織なので怪獣を倒す描写自体は割とあっさりしたもんなんだけど、怪獣の正体や目的の予測過程や怪獣学蘊蓄は読んでいるだけで楽しい。まぁ、怪獣について語り倒すのが面白くない訳無いんだよなぁ。

本作は5編の連作短編から構成されていて、それぞれのエピソードを読み進めるうちに世界観や登場人物への造形が深まっていき最終話に結実する。その最終話の盛り上がり様が見事。それまでの怪獣災害は特撮怪獣レベルだったのが最終話で一気に神話の怪物レベルに、そしてクトゥルーへ。さらに巨大ヒーロー(全裸美少女)登場に八つ裂き光輪まで大判振る舞い。ラストもニヤニヤさせられる感じのオチで楽しかった。ありがとうございました。